2016年1月20日
前回は,「相続」=「争続」ではなく,意外にも!?「もめない相続」の方が圧倒的に多いという話題でした。
ですから,まず学ぶべきなのは「もめない相続手続の方法」であって「もめた場合の対策」ではないのです。
もちろん「もめない」ように準備するのは必要ですが,まずは「もめない相続手続の方法」を考えましょう。
そうして準備しているうちにいつの間にか「もめない相続」になるのです!
私は年間約200件の相続手続の相談を承っています。
その中でも特に次の2つの質問が多いです。
まずは,「相続税はかかりますか?」です。
相続税については,みなさんとても心配していらっしゃいます。
でも実はほとんど心配ありません。
今回も統計データを基にしてみましょう。
平成24年度に相続税の課税対象となった人は,全国で52,394人です。
これは年間死亡者125万6,359人の4.2%となります。
つまり100人中96人には相続税は関係ないということなのです!
さらに新潟県に限って見てみましょう。
平成24年度の死亡者数は28,083人で,相続税の課税対象となった人は647人です。
これはたったの2.3%に過ぎません。
昨年から相続税の増税していますが,仮に納税対象が倍増してもたったの4%程度なのです!
確かに昨年のご相談からは相続税対象の方が増えたなとは思いますが。
ですが,大半の人は相続の準備に「相続税対策」は必要ありません!
次に多い質問は,
「遺産に何があるかよく分からないのですが,どうしたらいいですか?」です。
これは離れて暮らしていたご遺族だけではなく,同居していた方たちにもよく質問されます。
これを読むみなさんは,ご両親に預金がどこの金融機関にいくらあるのか聞いたことがありますか?
家族だからこそ聞きづらいといったお声もありますし,高齢の方の多くは生前にお金の話しをするのを嫌う傾向にあります。
遺産に多いのは不動産,預貯金,有価証券,保険あたりでしょう。
不動産の場合には,市町村から名寄帳(固定資産税課税台帳)を取得します。
これは市町村ごとに取らなければなりません。
預貯金の場合には,各金融機関の残高証明書を取得します。
住所地周辺から照会をしていき,最終的には全金融機関をあたることになります。
有価証券,保険も同様に各社に契約の有無を照会します。
最近で悩ましいのは,インターネット専業の銀行,証券会社,保険会社があることです。
照会をするのを忘れないようにしましょう。
後は,自宅に来る郵便物から遺産を推測することになります。
特に,借金がないかどうかは入念に探す必要があるでしょう。
このように亡くなった後だと遺産の確定はとても大変になりますから,生前にきちんと聞いておきたいものです。
エンディングノートのようなフォーマットを利用して,遺産リストを書き出してもらうのがいいでしょう。
ただし高齢になると「書く」行為自体が億劫になってしまい進まないことが多いので,ご家族が話しを聞きながら口述筆記をするのがよいと思います。
一番大切なのは,なるべく早いうちに遺産の全体像を把握することです。
次回は,具体的な準備についてさらに詳しくご説明したいと思います。