遺言とは、人の生前における最終的な意思を尊重して、遺言者の死後にその意思を実現させる為の制度です。つまり、遺言によって死後の財産や権利について継承者を自由に決めることができるという法律行為です。民法では、遺言に厳格な要件を定めているので、それによらない遺言は無効としています。
ですので、せっかく遺言を作るのでしたら、間違いのないものを作成しておきましょう!
被相続人が遺言によって、相続財産の分配方法を定める指定相続分を定めない場合、共同相続人全員による遺産分割協議による法定相続分を基礎にして分配方法を決めることになります。
しかし、協議の基礎となる相続財産の範囲やその評価、具体的相続分を決定する場合に共同相続人間で意見の相違があることはよくあることで、これが原因となって家族親族間が不和になってしまう、いわゆる「争続」になってしまうというケースも少なくありません。
また、財産が現金預貯金であれば、財産の分割も簡単で分けやすいですが、不動産や株といった財産の場合、誰がどれを相続するのかなど、利害が衝突して上手くまとまらないことが多くなります。しかし、遺言書があれば、相続人はそれに従うことになります。
このように家族間の紛争を未然に防ぐためにも、遺言書を作成しておく必要があるでしょう。
遺言事項とは、法律上遺言としての効力が認められている事項のことです。
遺言事項は大きく分けて「身分上の事項」「相続に関する事項」「遺産処分に関する事項」「遺言執行に関する事項」「その他」の5つに分けられます。これ以外のことを遺言しても法律上の効力はありません。この場合、遺言自体が無効になるわけではなく、その部分のみが無効となります。
遺言の方式には普通方式と特別方式の2種類があります。特別方式は、死期が迫っている場合などの特殊な状況下にのみ用いられる例外的な方式です。そのため、一般的に遺言を作成する場合は普通方式が用いられます。普通方式は、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つがあります。
自筆証書遺言とは、全文を自分で書く遺言書のことです。簡単で費用もかかりませんが、すべて自筆でなければならないので、代筆やワープロによるものは無効となります。また、日付の記入がないものや「平成○年△月吉日」のように、日付の特定ができない場合も無効となります。用紙の種類や大きさ、筆記具などは自由ですが、署名と押印は必ず必要になります。
公正証書遺言とは、法務大臣によって任命された公証人に、遺言の趣旨を口頭で述べ、それに基づいて公証人が作成する遺言書のことです。公正証書遺言は、字が書けない方でも作成することができ、公証人という法律の専門家が作成しますので、内容的に不備がありません。また、遺言書の原本を公証人役場で保管するため、偽造や変造の恐れがありません。
しかし、公正証書遺言の作成には2名以上の証人が必要になりますので、遺言の存在とその内容を、完全に秘密にすることはできません。また、手続きが煩雑なうえ、公証人への手数料がかかります。(手数料は相続財産が多くなるほど高くなります。)
秘密証書遺言とは、遺言書の本文はワープロや代筆によるものでも構いませんが、自らその証書に署名、捺印して封筒に入れ、その印と同じ印で封印を押します。それを持って2名以上の証人と共に公証人役場へ行き、公証人に提出し、封書に遺言者本人、証人、公証人が署名捺印して完成します。しかし、この遺言書は遺言の内容を秘密にできるというメリットはありますが、公証人により遺言の存在を証明してもらった後は、自分で保管しなければいけませんので、紛失や未発見になるおそれがあります。
特別方式には危急時遺言と隔絶地遺言があります。危急時遺言には一般危急時遺言、難船危急時遺言があり、隔絶地遺言には一般隔絶地遺言、船舶隔絶地遺言があります。
これらの方式は、普通方式による遺言が困難な場合において特別に認められた略式の方法であるため、遺言者が普通方式での遺言を作成できるようになったときから6ヶ月間生存していた場合は無効となります。